厚生労働省の「日本再興戦略2016」(平成28年6月2日閣議決定)では行政手続コストを、2020年4月までに20%削減し資本金1億円以上の事業主において、電子申請環境の整備が義務付けられています。
こうした動きの中で、健康保険組合の社会保険手続の業務効率化の観点から、電子申請の義務化が予定されています。

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電子申請普及に向けた国の取組

1.電子申請の義務化

大法人の事業主(資本金の額が1億円を超える法人並びに相互会社、投資法人および特定目的会社等に係る適用事業)については、原則電子化を義務化する。社会保険労務士または社会保険労務士法人が、大法人に代わって手続きを行う場合も同様とする。

2.環境の整備

届書における本人の署名等が省略されます。電子申請ガイドラインの策定が行われます。
マイナポータル(ぴったりサービス)等を利用した電子申請環境が構築されます。
マイナンバー連携による手続(被保険者住所変更届)の省略ができるようになります。

健康保険組合における対象の手続

国が整備する電子申請環境「マイナポータル(ぴったりサービス)」では、次の適用5申請が健康保険組合における対象の手続として想定されています。

➀特定の時期に提出するもの
被保険者賞与支払届
被保険者報酬月額算定基礎届

➁定期的または不定期に提出するもの
健康保険被保険者報酬月額変更届

➂基本的に1回限り提出するもの
被保険者資格取得届
被保険者資格喪失届

健康保険組合における電子申請の具体的方策

健康保険組合については、電子申請移行への環境を提供する方策として、届書における本人署名等の省略、電子申請ガイドラインの策定、マイポータル等を利用した電子申請環境の構築により、電子申請環境が整っていない健康保険組合への電子申請の導入を図る。

上記の対策を行うに当たっては、APIソフトの普及や、e-Govの利便性の向上に向けた対策を併せて講じることとする。
APIの活用推進については、事業主はAPIソフトを利用することにより、社内で利用している人事・労務管理のデータを用いて、申請に必要な添付書類を自動作成し申請ごとに添付書類を作成することなく電子申請が可能となります。

前出のとおり、健康保険関係手続について、電子申請移行への環境を提供する方策として事業主を経由して提出される届出のうち、従業員本人の押印・署名を求めている届出は7種類あるが、これらの手続きのうち事業主と従業員の利益が相反する可能性があり、従業員本人の意思を確実に確認する必要のある手続2種類を除いたその他の5種類(前出)については、事業主が「本人が当該届出を提出する意思を確認しました」を記載するなどの方法で、申出者署名欄の本人の押印・署名を省略することを可能とするなど、事務負担の軽減化も進められています。

加えて、全国社会保険労務士連合会等に対し、上記の義務化要件に該当しない事業所を含め、電子申請の促進に関して必要な協力要請もおこなうこととなっております。
こうした電子申請義務化の流れを、事務効率化のチャンスと捉え電子申請化に向けた対策を、早いうちから講じることが必要ではないでしょうか。

執筆陣紹介

SATO社会保険労務士法人

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。