2019年4月より順次施行されている「働き方改革関連法」の一環であり、改革の柱の一つである「同一労働・同一賃金」が2020年4月(中小企業は2021年4月)より施行されます。本号では法改正の概要と企業に求められる対応をご説明します。

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同一労働・同一賃金とは

「仕事が同じであれば、雇用形態が異なっても同じ賃金・待遇にすべきだ」とする考え方のことを同一労働・同一賃金といいます。現在、日本では労働者の約4割が「非正規雇用」であり、正規雇用との賃金格差が社会問題となっています。このような背景のもと、政府は、雇用形態に基づく不合理な待遇差を解消すべく、派遣やパート等非正規雇用の処遇について統一的に指針を定め、パート労働法その他法律を改正しました。

法改正のポイント

【不合理な待遇差の禁止】

同一条件・内容の職務を行う場合、雇用形態の違いをもって待遇に差を設けてはなりません。なお、「同一労働」については、職務名等に関わらず職務の実態により、中核的な職務内容が同じであれば「同一労働」と判断されます。
また、待遇差が「不合理」であるかどうかは、①職務の内容・責任の程度②職務の変更・配置転換の範囲③その他の事情によって判断されます。

【待遇に関する説明義務】

事業主は、短時間・有期雇用労働者等から正規雇用者との待遇差について説明を求められた場合、説明を行わなければなりません。

【行政による事業主への助言・指導等】

均等待遇・待遇差の説明について、労働局での紛争解決手続きや行政ADRの対象になります。

企業に求められる対応

それでは実際にどのような対応を取る必要があるのか、厚生労働省が策定した指針をもとにご説明します。

【 Ⅰ .現状の雇用形態・待遇差の有無を確認する】
正規・非正規の雇用区分の有無、派遣社員の有無等を確認します。その上で、雇用形態によって賃金や待遇に差がないかを確認します。賃金であれば基本給・各種手当・賞与といった各項目を、待遇であれば昇給・休暇・福利厚生・教育制度といったあらゆる待遇を確認します。

【 Ⅱ .待遇差の要因(合理性)を確認する】
待遇差の合理性は先述の判断要素で判断されます。例えば、住宅手当について、「非正規雇用者は正規雇用者と異なり転勤がないので、住宅手当を支給しない」といった取り扱いは合理性があるとされます。一方、「今までの慣習」や、「将来の役割期待の違い」といった抽象的な理由では合理性が不十分とされます。
合理性有無の判断については厚生労働省の指針に具体例が記載されていますので、参考にされてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf
厚生労働省(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)

【 Ⅲ .制度の見直しを行う】
待遇差を解消する場合、「正規雇用者の待遇を下げて非正規雇用者と同水準にすることは望ましくない」との見解が指針で示されているため、非正規雇用者の待遇を改善する方向で検討すべきでしょう。なお、制度の見直しに際しては人事制度の変更や就業規則の改定などが発生しますので早めの取り組みをお勧めします。取り組みの方法・手順については厚生労働省のリーフレットも参考にされてください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000468444.pdf
厚生労働省(パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書)

【 Ⅳ .派遣労働者についての対応】
派遣社員については、派遣先の正規雇用者と同待遇にすることが派遣元には原則として求められます。ただし、派遣先によって条件が様々であることで、賃金が不安定になることも想定されるため、派遣労働者と賃金や待遇の決定方法を定めた労使協定を締結する方法が選択できます(労使協定方式)。詳細は下記の資料をご確認ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/000473039.pdf
厚生労働省(平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働・同一賃金>)

執筆陣紹介

SATO社会保険労務士法人

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。