厚生労働省から、平成30年度の「監督指導による賃金不払残業の是正結果」が公表されました。
これは、全国の労働基準監督署が企業への監督指導を行った結果、平成30年4月から平成31年3月までの期間に不払だった割増賃金が各労働者に支払われたもののうち、その支払額が1企業で合計100万円以上となった事案を取りまとめたものとなります。

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1.是正企業数

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是正企業数は1,768企業です。また、上記のうち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、228企業(前年度比 34企業の減)となっています。
なお、業種別では、製造業(332企業)、商業(319企業)、保健衛生業(230企業)、建設業(179企業)、運輸交通業(118企業)の順に多くなっています。

2.対象労働者数

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対象労働者数は、11万8,837人です。
なお、業種別では、保健衛生業(23,981人)、製造業(23,922人)、商業(15,516人)、運輸交通業(10,355人)、教育研究業(7,404人)の順に多くなっています。

3.支払われた割増賃金合計額

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支払われた割増賃金合計額は、125億6,381万円です。
なお、業種別では、保健衛生業(27億2,010万円)、商業(18億6,407万円)、製造業(17億4,632万円)、教育研究業(13億7,392万円)、建設業(9億742万円)の順に多くなっています。
また、支払われた割増賃金の平均額は、1企業当たり711万円、労働者1人当たり11万円です。

4.監督指導の事例

監督指導の事例として、次のものが紹介されています。

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上記事例のように、自己申告制の運用が不適切なために労働時間が適正に把握されず未払い賃金が生じているケースは、一般的にも多くみられます。

ぜひ、この機会に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に記載されている労働時間の考え方や自己申告制により労働時間を把握する場合の留意点等を改めて確認の上、自社の労働時間管理に不備がないか点検されてみてはいかがでしょうか。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

執筆陣紹介

■岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。