年に一度必要な手続きである労働保険の年度更新の時期が近づいてきました。間もなく、労働局から会社宛てに、緑の封書で手続書類が送付されてくると思います。
今回は労働保険の年度更新の基本的な仕組みについてご紹介します。

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労働保険の年度更新

労働保険は雇用保険と労災保険の2つの保険をいい、労働保険料は労働保険にかかわる保険料で事業主負担分と被保険者負担分を合わせたものをいいます。
社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の納付は毎月行いますが、労働保険料の納付は毎月ではなく、年に一度計算して申告・納付する方法をとっています。
この労働保険料を申告し納付する手続きを「労働保険の年度更新」といいます。

労働保険料の計算

労働保険料は、次の方法により計算します。

労働保険料

= 雇用保険の被保険者に支払った賃金総額 × 事業の種類に応じて定められた雇用保険料率
+ すべての労働者に支払った賃金総額 × 事業の種類に応じて定められた労災保険料率

保険料率は年度ごとに決定されますが、平成30年度と平成31年度の保険料率は変更がなく同じです。

〇 労災保険率 *下の表は拡大できます。

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概算保険料と確定保険料

労働保険料は、保険年度(4月1日から翌3月31日)ごとに概算で保険料を計算して納付し、賃金総額が確定したあとで精算する方法をとっています。
従って、平成31年度の申告においては、平成30年度の「確定保険料」の申告と、平成31年度の「概算保険料」の申告を行います。平成30年度の確定保険料の申告では、前年度に納付した平成30年度の概算保険料を差し引いて計算し、不足額があれば追加で保険料を納め、前年度に納付した概算保険料が多ければ平成31年度の概算保険料に充当します。

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なお、平成31年度の概算保険料の計算にあたっては、平成31年度の賃金総額が、平成30年度の賃金総額(確定)と比較して50%~200%の範囲内の見込み額であれば、平成30年度の賃金総額(確定)を、平成31年度の賃金総額(概算)として計算します。
また、確定保険料では、石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用のため、一般拠出金を合わせて申告し納付します。

申告期日

労働保険の年度更新の手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に、労働局等に書類を提出することにより実施する必要があります。なお、電子申請も可能です。
また、期日までに確定保険料の申告を行わなかった等の場合は、追徴金(納付すべき保険料の10%)が課されることがあります。

執筆陣紹介

■岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。