「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)により、政府が副業・兼業の普及促進を図る一方で、複業という新しい考え方が注目されています。

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副業と複業の違い

副業 : 本業の存在を前提に空いた時間を使って仕事をすることを指します。
複業 : それぞれの仕事に序列をつけず、全て本業として仕事をすることを指します。

では、複業(副業)労働者の時間管理、健康管理についてはどの事業者が責任を負うのでしょうか。現行制度では以下のように考えられています。

時間管理について

労働基準法第38条

「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」
※「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。
[通達(1948(昭和23)年5月14日基発第769号)より]

現行制度の取り扱いにおいては「労働基準法上の義務を負うのは、当該労働者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った使用者」とされています。

一般的には…

契約締結時に他の事業所での労働を確認するべき
⇒時間的に後から契約締結した使用者が義務を負うこととなります。

尚、以下の場合は契約締結の時間的先後に関わらず義務を負います。

  • 労働時間の通算の結果自社で発生した法定外労働時間について、36協定の締結義務と割増賃金の支払い義務
  • 通算した所定労働時間が既に法定労働時間に達している事を知りながら労働時間を延長する場合の同法上の義務。

健康管理の責任

労働安全衛生法第66条の健康診断等の実施について対象労働者を限定していないことから、それぞれの事業者が義務を負います。

しかし、労働安全衛生法には複数事業所での労働時間の通算の規定がないため、ストレスチェックや面接指導の対象労働者の選定についての取り扱いについては今後の課題として検討されます。

[参考ホームページ・資料等]

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000536311.pdf

※参考資料は「副業」についての検討となりますが、制度の取り扱いとして「複業」にも当てはまるものとしてご紹介します。

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SATO社会保険労務士法人

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