少子高齢化社会、労働人口の減少、年金の減少や社会保険料の値上げなどを背景に、
生活の充実度に個人の金融リテラシー(知識と判断力)が、大きな影響を与えています。

一部の企業では、これらの状況を鑑み、従業員に対して金融の基礎的な知識を身につける機会を提供し、ライフプランの充実とそれに向けて仕事に打ち込める環境づくりを支援する取り組みが行われています。一方で、これらの取り組みを実施するにあたり、総務・人事の教育担当者自身の金融知識不足が原因で、業員の積極的な参加意識を促せない教育プランになるケースも散見されます。

そこで本コラムでは、まずは企業の教育担当者向けに、総務・人事のための「わかりやすい金融基礎知識コラム」をシリーズでお届けます。従業員向け教育企画の一環として、ご参考になれば幸いです。

第5回
我が家の家計が宝の山に(笑)?!・・賢い家計簿のつけ方

みなさんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの菊池です。

土曜の夜ドラで「三千円の使い方」というドラマが始まりましたね。
高校教育としては2022年4月から金融教育が拡充され、金融リテラシーの向上に世の中が動き始めています。高校向け 金融経済教育指導教材の公表について:金融庁 (fsa.go.jp)をご覧いただくと、広く浅く体系的にまとめられていて、わかりやすいな。と、ご理解いただけると思います。
そんな中始まった、このドラマですが、原作には目を通しておらず、どのような先行きかわかりませんが、ドラマに出てきたポイントや金融教育の教材を軽く掘って、皆様にご紹介できればと思います。

※なおドラマ「三千円の使い方」は本コラム掲載時にはすでに終了しています。
 執筆時と掲載時の間隔によるものです。ご了承ください。(2023年3月)

主人公は家を出て一人暮らし、夕飯はデパ地下でグルメ巡りという生活をして「今を楽しむ」という生活をしています。そんな主人公が「一軒家を買って、保護犬を引き取る」というライフイベントを発生させます。そんな主人公の為に、祖母から「毎日100円貯金」、元証券マンの姉から「固定費の見直し」というアドバイスを受けます。それにより主人公のとった行動は!?というのが第一話でした。

ライフイベントの為の家計見直し。という意味で興味深く拝見させていただきました。
どちらもセオリー通り。ですね。
毎日100円貯金というのは、「日々継続させること」という新しい習慣の定着と、毎月3千円の貯蓄を実現するという見事な例えだなと思います。今までの習慣を変えていくというのは、散財体質だった主人公を貯蓄体質に変えるのに非常に重要な事ですので、今後のストーリーに大きな意味を持っていくのではないかと予想します。

次に固定費の見直しですね。固定費は生きるだけでかかる費用です。家賃、食費、光熱費、保険やスマホや会費など月額で発生するものです。もちろん交際費や趣味にお金を使い過ぎている場合は、それらの見直しも必要ですが、まずは固定費の見直しです。
固定費は毎月勝手に?出て行ってしまうお金なので、これを圧縮できれば、来月以降圧縮した分が自分の手元に残るのです。
どこに価値を見出して妥当な金額だという判断は、個々にあると思いますが、ライフイベントが発生したら、それが最優先です。少しの妥協で家賃が1万円下がるとか、スマホがSIMフリーで外では動画サービスを見ないとか、飲み物を買わずにマイボトル持参とか「習慣」を変えると、確実に固定費は下がります。
使っていないクレジットカードで年会費発生していないですか?そのサブスクリプションは会費を払って利用する価値がありますか?保険の適正金額を知ったうえで保険契約してますか?ついついお菓子買いすぎてないですか?、必要以上に冷暖房かけてないですか?
など、気にする事はいっぱいあります。気にしていなかった人は気にするように、「習慣」を変えてみてください。意識が変わると行動が変わり始めます。

見直すうえで、他と比べてどうだろう?という観点があると思います。これについてはネットで情報を集めるよりも、顔見知りの人と情報交換したほうが良いと思います。
統計値って目安になっても、自分と比較するほど細かい情報ではないと思うんです。わかりやすいように極端に言うと、オール家電の家とガスも使う家では、光熱費の比較ってあまり意味がないですよね。でも統計値には全部入っちゃうんですよ。
なので、統計値や平均値は目安として利用するようにしてください。顔見知りの方であれば、前提条件や利用方法など、詳しく比較ができますからね。

さて、主人公がとった行動は・・・
一人暮らしをやめて、実家に戻りました。家賃を貯蓄にまわせそうですね。食費や光熱費もだいぶ節約できるのではないでしょうか?

そして第2話では、主人公が祖母の古い家計簿を目にして、祖母から家計簿の大事さを聞くシーンがありました。第一話で固定費を見直そうといいつつ、固定費を把握していなければ節約も何もありませんので、家計簿は大事です。

貯蓄や投資の為、あるいはライフイベントを実現するために、最初に行う事は
家計簿をつける習慣を持つことになります。

家計簿のつけ方の基本は収支管理になりますので、管理したい単位で記録してください。
細かく区分を設定すれば、分析は簡単かもしれませんが、記録をつける事が苦痛になっては続きません。自分にあった粒度で実施してください。

大きく2段階アプローチがあるのではないかと考えます。

・全体をざっくり把握してから、改善ポイントを探していく
・改善すべき場所の予想はついたので、細かく確認する

全体をざっくり把握する場合は、次の科目粒度でどうでしょうか?

収入系  給与・賞与
固定費系 食費、住居費、水道光熱費、通信費、教育費、民間保険料
変動費系 交通費、被服費、娯楽費、交際費、医療費
その他  雑費

概ね全体像を把握できて、改善点を見つけることができると思います。

改善すべき場所の予想がついた場合は、一部分だけ細かくします。
全体をざっくり把握したあとは、この粒度で記録できると非常にわかりやすくなります。
例えば、外食費が多いのかも?と思っている場合、食費は外食費とそれ以外に分けます。
様々な家計簿アプリがあると思いますが、明細を記録するときに属性をつけられるものを使えば、集計も楽にできると思います。例えば

〇月〇日 食費 800円
〇月△日 食費 3200円

ですと、日付、費目、金額の管理しかできませんが
〇月〇日 食費 外食 800円
〇月△日 食費 食料品 3200円

と記録できると、日付、費目、属性、金額の管理ができて、科目別属性別の集計によって、気になる項目の分析ができるようになります。

我が家では、妻に家計簿をつけてもらっています。自分には継続できない事なので。感謝感謝です。おかげ様で、毎年の収支や支出の変化をとらえる事ができています。
これを見ると、真っ先に圧縮したくなるのが、自分の小遣いだったというツラい現実だったりします。それはそれで、いったん棚にしまっておくとしてですね・・・。

さて、出来上がった家計簿を集計したら、圧縮したいと思う科目とにらめっこしてみてください。例えば、食費を下げようと思ったら、どうやって下げるのか?外食を減らすのか?遠方だけど価格の安い店に変えるのか?光熱費を下げようとしたら、冷暖房の仕方を変えるのか?LED電球を使うのか?電流契約を変えるのか?といった事を真面目に考えて、情報を集めて、出来そうなことを習慣化していく事が必要です。

それが難しいのよね~。という方は、逆転の発想で、先に貯蓄額を決めてから残りの使い道を決めてみて下さい。そのような状況になると上手くいく・・・かもしれません。

家計の表情は千差万別です。思わぬ宝の山が眠っていることも良くあります。宝の山の発見にはファイナンシャルプランナーを使ってみてください。宝の山とは言わずとも、カケラくらいは見つけてくれるかもしれません。

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 菊池光純
※本コラムを通して、FPに相談・質問をしてみたい、こういうテーマを扱ってほしいというご要望があれば事務局までご連絡ください。