少子高齢化社会、労働人口の減少、年金の減少や社会保険料の値上げなどを背景に、
生活の充実度に個人の金融リテラシー(知識と判断力)が、大きな影響を与えています。

一部の企業では、これらの状況を鑑み、従業員に対して金融の基礎的な知識を身につける機会を提供し、ライフプランの充実とそれに向けて仕事に打ち込める環境づくりを支援する取り組みが行われています。
一方で、これらの取り組みを実施するにあたり、総務・人事の教育担当者自身の金融知識不足が原因で、従業員の積極的な参加意識を促せない教育プランになるケースも散見されます。

そこで本コラムでは、まずは企業の教育担当者向けに、総務・人事のための「わかりやすい金融基礎知識コラム」をシリーズでお届けます。従業員向け教育企画の一環として、ご参考になれば幸いです。

第1回
相談する前に知っておきたいFPの生態とは?

みなさん初めまして。ファイナンシャルプランナーの菊池です。
クレオユーザ会様向けに、ファイナンシャルプランナーからの視点で、様々なお金に関する事をお話させていただければと思います。

まず第1回は「ファイナンシャルプランナーの生態」についてです。
社会的に認知度は高まっていると思いますが、ファイナンシャルプランナー(以後:FP)には特徴的な生態があります。FPに相談される際には、FPがどのような特色を持っているのかを
ご理解いただいたうえでご相談されると、期待に沿った提案を受けられますので、
まずはFPの生態系と守備範囲をご紹介したいと思います。
FPを知らなかったよ。という方も本コラムで少しでも認知いただければ幸いです。

そもそもFPとは

ひとくちにファイナンシャルプランナー(以下:FP)といっても様々な生態(特徴というかFPの
方が置かれている状況ですね)があるのをご存じでしょうか?

FPは、皆様の将来を一緒にデザイン+プランニングをすることが仕事です。将来とは、いってみればライフイベントを含め実現したいことです。結婚・出産・退職・相続・贈与・子どもの教育・住宅や車の購入などライフイベントはたくさあります。
この将来計画を実現するため、お金に関する様々な知識を使って、いつまでに何をどうしよう。を皆様と考えるので「ファイナンシャルプランナー」という名前なのです。

FPってどこにいるんだろう?

多くのFPはファイナンシャル・プランニング技能士という国家資格(1~3級)を持っています。民間資格だと、AFP(2級相当)やCFP(1級相当)になります。ファイナンシャル・プランニング技能検定2級であれば、年3回の試験があり、毎回1~2万人の合格者がおります。ですが、FPの資格もってますって方をあまり見ないような気がします。

FPの生態「企業系と独立系」とは?

実はFPには独占業務がありません。つまり、税理士や社労士、会計士といった資格保有者
に認められる 「この仕事はこの資格を持っていないとダメ」 という領域がないのです。
したがって、多くのFPはFPの資格を取るために勉強しているのではなく、主たる業務の付帯的な意味合いで資格を取得しています。そのような方を一般的に「企業系FP(仕業系FP)」と呼びます。一方でFPを主たる業務にしている方を「独立系FP」と呼んでいます。

時々見かけるFPによる無料相談の広告は、ほとんどが企業系FPの仕事になります。
住宅販売の会社であれば、現在の家計で住宅ローンがどうなるか。保険の会社であれば、リスクにそなえた商品のご提案。証券や銀行であれば、資産形成するための商品をご紹介することになります。

いじわるな言い方をすると保険会社のFPは不動産の資産形成を提案することは、ほぼ無いと思いますし、住宅販売会社のFPが株式投資の提案をすることもないでしょう。

企業系FPについて

誤解しないでいただきたいのは、企業系FPの皆さんは、FPである前に企業に勤めるサラリーマンであるという事です。そのため、企業人としての活動を行っているにすぎません。
どこの企業が開催している相談会であるかは、事前にご理解されていると思いますので、大きな違和感はないかと思いますが、企業系FPにご相談すれば、何らかの金融商品の勧誘があることはご承知ください。

要するに「主たる業務>FP業務」という関係性が明確なのです。これは士業の方も同じです。「士」としての業務においてFPの領域はあまり意味を持ちません。例えば税理士の方がFPの資格を持っていたとして、税務関連の事であれば、独占業務を持たないFPが税務関連のことで税理士の方以上の何かをご提案することはできないのです。

独立系FPについて

では独立系FPならどうでしょうか?独立系FPの場合でも、多くの人脈をお持ちで提案内容によって金融各社へご紹介して紹介手数料をいただいている場合もあります。(いただいていない方もおられると思います)こちらの場合は、独立系でありながら、かなり企業系FPに近い存在になります。もちろんそのほうが業者を探す手間が省けてよいと考える方もいらっしゃると思います。

そうなると独立系FPって最弱?と思われるかもしれません。確かに独占業務を持たない以上「武器」は少ないです。しかし最大の武器は「誰にも忖度しないこと」です。FPの倫理規定では「顧客の利益を最優先すること」があります。これを実現する為にどのような立場をとるのか?FPの考え方が試される部分です。

つまり、FPの特色は様々なので、それを踏まえてご相談いただきたいという事です。FPそれぞれで考え方も異なりますので、複数のFPに相談してみると、より良い相談結果を得られると思います。
※筆者は金融関連企業に縁のない、完全な独立系FPの立場で執筆しております。

FPの対応範囲

FPは投資判断と金融商品の勧誘は禁止されています。また独占業務を代行することもできません。そのため、特定の株や商品をお勧めしたり、税務・法律などの業務をすることはできませんが、幅広くお金に関わることに対応することが可能です。

ここではFPが対応する6つの分野をご紹介します。
 ①ライフプランニングと資金計画
   家計管理や教育・住宅・老後資金の計画
 ②リスク管理
   保険の内容相談や見直し相談
 ③金融資産運用
   資産運用の為の投資先相談
 ④タックスプランニング
   税制の相談、控除される税制の相談
 ⑤不動産
   不動産の利活用相談
 ⑥相続・事業継承
   終活のお手伝いや金融資産の相続・贈与対策相談

先日下記のようなニュースが出ていました。今後は提案内容の深さが変わっていくかもしれません。

 【独自】ファイナンシャルプランナーの権限拡大を検討へ、金融庁には慎重論も(ビジネス+IT) - Yahoo!ニュース

次回は老後資金と確定拠出年金について、執筆したいと思います。

2級ファイナンシャル・プランニング技能士 菊池光純
※本コラムを通して、FPに相談・質問をしてみたい、こういうテーマを扱ってほしいというご要望があれば事務局までご連絡ください。