2019年4月から適用される年次有給休暇の時季指定について、パンフレット等の資料が公開され始めましたが、今回はその中からQ&A( https://www.mhlw.go.jp/content/000465759.pdf)の一部を抜粋してご紹介します。なお、通達内容の抜粋は青枠内となります。

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*使用者による時季指定
問1 法第39条第7項に規定する使用者による時季指定は、いつ行うのか。
答1 法第39条第7項に規定する使用者による時季指定は、必ずしも基準日からの1年間の期首に限られず、当該期間の途中に行うことも可能である。

⇒年次有給休暇の時季指定の対象となる者に対して、付与日から1年間に5日の年次有給休暇を取得させていればよく、使用者の時季指定のタイミングは問われません。なお、確実に5日の年次有給休暇の取得が履行されるよう、業務の都合等を踏まえて、時季指定のタイミングについてルールを決めておく必要があるでしょう。

*半日単位・時間単位による時季指定の可否
問3 法第39条第7項の規定による時季指定を半日単位や時間単位で行うことはできるか。
答3 則第24条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が法第39条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことは差し支えない。この場合において、半日の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱うこと。また、法第39条第7項の規定による時季指定を時間単位年休で行うことは認められない。

⇒年次有給休暇の取得は、原則は「1日単位」ですが、「半日単位」でも差し支えないとされており、「半日単位」のルールを定めるかは会社の任意となっています。また、「時間単位」のルールも会社の任意ですが、この場合はルールを定めるにあたり労使協定の締結が必要となっています。今回の年次有給休暇の時季指定においては、「1日単位」又は「半日単位」で取得した年次有給休暇は対象となりますが、「時間単位」で取得した年次有給休暇は対象になりません。したがって、年5日の年次有給休暇の時季指定にあたっては、「時間単位」で取得した年次有給休暇分を除外して日数を管理する体制が必要になります。

*事後における時季変更の可否
問5 労働基準法第39条第7項の規定により指定した時季を、使用者又は労働者が事後に変更することはできるか。
答5 法第39条第7項の規定により指定した時季について、使用者が則第24条の6に基づく意見聴取の手続を再度行い、その意見を尊重することによって変更することは可能である。また、使用者が指定した時季について、労働者が変更することはできないが、使用者が指定した後に労働者に変更の希望があれば、使用者は再度意見を聴取し、その意見を尊重することが望ましい。

⇒すでに指定した時季を、使用者が、再度意見聴取の手続きを行って変更することは可能とされています。一方、すでに指定した時季について、労働者が変更を希望した場合は、使用者は再度意見聴取の手続きを行ってその意見を尊重して変更することが望ましいとされています。

*義務の履行が不可能な場合
問6 基準日から1年間の期間(以下「付与期間」という。)の途中に育児休業が終了した労働者等についても、5日の年次有給休暇を確実に取得させなければならないか。
答6 付与期間の途中に育児休業から復帰した労働者等についても、法第39条第7項の規定により5日間の年次有給休暇を取得させなければならない。ただし、残りの期間における労働日が、使用者が時季指定すべき年次有給休暇の残日数より少なく、5日の年次有給休暇を取得させることが不可能な場合には、その限りではない。

⇒育児休業等により付与期間の一部を休んでいる労働者についても、付与期間に5日の出勤すべき日がある場合は、年次有給休暇の時季指定の対象になりますので注意が必要です。

*端数の取扱い
問9 則第24条の5第2項においては、基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間の月数を12で除した数に5を乗じた日数について時季指定する旨が規定されているが、この「月数」に端数が生じた場合の取扱い如何。また、同規定により算定した日数に1日未満の端数が生じた場合の取扱い如何。
答9 則第24条の5第2項を適用するに当たっての端数については原則として下記のとおり取り扱うこととするが、この方法によらず、月数について1箇月未満の端数をすべて1箇月に切り上げ、かつ、使用者が時季指定すべき日数について1日未満の端数をすべて1日に切り上げることでも差し支えない。

【端数処理の方法】
①基準日から翌月の応答日の前日までを1箇月と考え、月数及び端数となる日数を算出する。ただし、基準日の翌月に応答日がない場合は、翌月の末日をもって1箇月とする。
②当該端数となる日数を、最終月の暦日数で除し、上記①で算出した月数を加える。
③上記②で算出した月数を12で除した数に5を乗じた日数について時季指定する。なお、当該日数に1日未満の端数が生じている場合は、これを1日に切り上げる。

(例)第一基準日が10月22日、第二基準日が翌年4月1日の場合
①10月22日から11月21日までを1箇月とすると、翌々年3月31日までの月数及び端数は17箇月と10日(翌々年3月22日から3月31日まで)と算出される。
②上記①の端数10日について、最終月(翌々年3月22日から4月21日まで)の暦日数31日で除し、17箇月を加えると、17.32…箇月となる。
③17.32…箇月を12で除し、5を乗じると、時季指定すべき年次有給休暇の日数は、7.21…日となり、労働者に意見聴取した結果、半日単位の取得を希望した場合には7.5日、希望しない場合には8日について時季指定を行う。

*就業規則への記載
問14 法第39条第7項の規定による時季指定について、就業規則に記載する必要はあるか。
答14 休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、使用者が法第39条第7項による時季指定を実施する場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載する必要がある。

⇒2019年4月1日までに、年次有給休暇の時季指定の方法を検討の上、就業規則への規定が必要になります。

執筆陣紹介

■岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。