過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることができる社会を目指して、2014年6月に「過労死等防止対策推進法」が制定され、同年11月から施行されています。また、同法に基づき、過労死等の防止対策を効果的に推進するため、2015年7月に「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、過労死等防止大綱)が定められています。
過労死等防止大綱が定められてから3年が経過する中、これまでの取り組みを踏まえて、先月24日に同大綱が閣議決定により改定されています。

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数値目標

過労死等防止大綱では、過労死等防止対策の数値目標が示されていますが、その項目と数値目標等は下表の通りとなっています。➀、➂、➃は従来から設定されていた項目ですが、➁、➄、➅は今回新たに追加された項目となります。

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勤務間インターバル制度

今回新たに設定された項目に「勤務間インターバル制度」に関するものがあります。「勤務間インターバル制度」とは、終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間を設けるものをいいます。
EUでは、加盟国では最低でも連続11時間の休息期間を確保するために必要な措置をとることとされ、各国で最低11時間の休息時間を設けることを法律で義務付けています。
一方、日本では、タクシーやトラックなどの自動車運転者の労働時間等の改善のために定められた基準(改善基準告示)にはその考え方が導入されていますが、勤務間インターバル制度を義務づける法律はなく、「平成29年就労条件総合調査(厚生労働省)」によれば、同制度の導入率はわずか1.4%となっています。

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努力義務として

勤務間インターバル制度については、今通常国会で成立した働き方改革法案のひとつである「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」の改正において、努力義務ではあるものの、労働時間等の設定改善を図るための措置のひとつとして新たに追加されています。

勤務間インターバル制度を導入した場合は、例えば、前日遅くまで残業した場合は翌日の始業時刻を一定時間後に遅らせる等の対応となるため、長時間労働の削減や休息を確保する制度として有効な施策といえます。各社で働き方の見直しが行われていますが、その際のひとつの仕組みとして導入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、中小企業には、勤務間インターバル制度導入等に伴う助成金も用意されていますので、これらの活用も含めて検討されるとよいでしょう。

*時間外労働等改善助成金
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000150891.html

執筆陣紹介

■岩楯めぐみ(特定社会保険労務士)

食品メーカーを退職後、監査法人・会計系コンサルティンググループで10年以上人事労務コンサルティングの実施を経て、社会保険労務士事務所岩楯人事労務コンサルティングを開設。株式上場のための労務整備支援、組織再編における人事労務整備支援、労務調査、労務改善支援、就業規則作成支援、労務アドバイザリー、退職金制度構築支援等の人事労務全般の支援を行う。執筆は「企業再編・組織再編実践入門」(共著/日本実業出版社)、「まるわかり労務コンプライアンス」(共著/労務行政)他。

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※本コラムに記載された内容は執筆者個人の見解であり、株式会社クレオの公式見解を示すものではありません。