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経営戦略において、「攻め」を担うマーケティング部門と、どちらかと言えば「守り」を担うIT・情報システム部門は、長らく「水と油」の関係にあると言われてきました。 とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大以降、これまで以上にデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれ、消費行動のデジタルシフトも急速に進んでいる現在、業種やビジネスモデルを問わず、両部門の連携は必須であると言えるでしょう。 そこで今回の記事では、最新のマーケティング動向に触れつつ、IT担当者として最低限知っておきたいマーケティング知識や事例を紹介します。

コロナ禍でも伸びているビジネスモデル

コロナ禍でリアル消費が低迷する中、あらためて注目を集めているのが、EC通販やD2C(Direct to Consumer)と呼ばれる、オンラインでダイレクトに消費者にアプローチするビジネスモデルです。 EC通販については全世代で利用が増えているという調査結果もあり、その背景として、これまで利用していなかった消費者が、ステイホーム中にその利便性に気付いたことが挙げられています。

比較的新しいビジネスモデルであるD2Cについては、説明が必要かもしれません。メーカーやブランドが自社で企画・生産した商品を、流通業者を介さずに直接消費者に販売するという事業形態で、基本的な仕組みはEC通販と似ていますが、マーケティングにおいてSNSに注力するなど、セールスだけでなくブランディングにも重点を置いている点が特徴です。

アイドルグループAKB48の元メンバー小嶋陽菜がプロデュースを手掛けるアパレルブランド「Her lip to(ハーリップトゥ)」も、アパレル企業が軒並み苦戦を強いられる中、D2Cによって好調を維持しています。 リアル店舗は持たず、Instagramを始めとするSNSからECサイトに誘導。SNS上では熱狂的なファンコミュニティも形成されており、20,000円以上するワンピースが発売と同時に完売するほどです。 今回のコロナ禍でも、顧客インサイト(潜在的な欲求)を敏感に察知し、通常のアイテムに加えて部屋着などの新アイテムを発売。まさに消費者とダイレクトにつながるD2Cならではの戦略と言えるでしょう。

海外ではあのディズニーもD2Cの動画配信サービスを開始し、コロナ禍で有料会員数を増やしています。まだしばらくの間はリアル消費の低迷が続くことを考えると、業界を問わずマーケティングのデジタルシフトは加速していくことが予想されます。

マーケティングに対する大きな勘違い

こうした流れの中で、IT部門に求められる役割も従来とは変わってくるはずです。IT部門が自社のマーケティング戦略に最適なツールを選択・活用したり、ITベースのマーケティング施策を提案したりできる存在になれば、企業としても大きなメリットです。まさに「守り」から「攻め」へ、売上に直結する進化形のIT部門と言えるでしょう。個人としても、マーケティング視点からシステムを構想できるようになれば、IT人材としての市場価値も高まります。

とはいえ、ひと口にマーケティングと言ってもその範囲は多岐に渡ります。とりわけデジタルマーケティングは日進月歩で進化を続けている分野。初心者が全体像をつかむのは容易ではありません。 同時に、マーケティングは誤解や勘違いされることが多いジャンルでもあります。特に顕著なのが、マーケティングは広告・販促(プロモーション)活動や市場調査であるという誤解。しかし、というか当然、どちらも間違いです。今後、IT担当者としてマーケティングに関わろうとするのであれば、まずはこうした誤解を解き、マーケティングを正しく理解しなければなりません。

では一体、マーケティングとは何でしょうか? シンプルに説明すると、商品やサービスが「売れる仕組みをつくる」こと。もう少し踏み込んで言うと、「売れ『続ける』仕組みをつくる」ことです。

その中には当然、先ほど挙げた広告や販促活動、市場調査なども含まれます。しかし、それらはあくまで施策のひとつに過ぎません。たとえ、あるWeb広告によってECサイトへの訪問者数が増加しても、売上につながらなかったり、ほとんどの訪問者が一度購入しただけでは、マーケティングとしては成功とは言えないのです。

では、マーケティング部門はどのようにして、マーケティング施策全体を成功に導くのでしょうか。次回は、マーケティングで使う用語や指標から、その取り組みを紹介していきます。

全2回いまIT担当者が知っておきたいマーケティング知識

《連載:第2回》 いかにしてIT部門とマーケティング部門は連携すべきか?

《連載:第1回》 IT担当者もマーケティング知識が必要な理由とは?