
もともと男性中心的である日本企業にあって、IT部門はとりわけその傾向が強いと言われることがあります。国が違っても事情は変わらず、2017年にグーグルの男性技術者による女性差別的な文書が流出し、アメリカ社会に波紋を広げたこともありました。
とはいえ、ジェンダーに限らず、あらゆる差別に反対する社会運動が盛り上がる中、ビジネスにおいても「多様性(ダイバーシティ)」に配慮するのは、もはや常識になりつつあると言って良いでしょう。 今回は、そんな「多様性について考える本」を3冊(+1冊)紹介します。
多様性について考える本① 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 (ブレイディみかこ/新潮社)
〈他人の靴を履いてみること〉。共感という言葉にはない、ある種の「覚悟」を感じさせるこの姿勢こそ、多様性を実現するための第一歩かもしれません。
多様性について考える本② 『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ/筑摩書房)
特に、「自分は問題ない」「会社に差別やハラスメントはない」と思っている男性におすすめです。男性が誠実で公平だと思っている言動も、女性にとってはいかにピント外れで差別的なものであるかということに気付かされるはずです。
多様性について考える本③ 『翻訳できない世界のことば』(エラ・フランシス・サンダース著/創元社)
言葉というものの多様性に驚かられつつ、言葉を通して、その国や民族の方々の暮らしぶり、ちょっとした日常のシーンが浮かんできて、何ともいえずホッコリとした気持ちにもなります。「異文化理解は外国語習得から」とも言われますが、忙しい毎日でも、本書のページをめくりながら、遠い国の人々の生活や文化に思いを馳せる時間をとってみるのはいかがでしょう。
言葉と言えば、本書を気に入った方におすすめなのが、『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(奥野克己著/亜紀書房)という本。
人類学者が、タイトル通り「ありがとう」や「ごめんなさい」という言葉が存在しない、と同時に、富の独占や自己責任の概念もないボルネオ島の狩猟民族「プナン」とのフィールドワークをまとめた一冊です。自分とは常識も価値観もまったく異なる社会や人々を知ること。それもまた、多様性実現のために大切なことではないでしょうか。
今回はいつもと趣向を変えて、書籍を6冊(+1冊)紹介しました。一見、ITとは関係のないものがほとんどでしたが、普段なじみのない思考や感性に触れることが、思わぬ形で日々の仕事のヒントになることはよくあります。そして読書こそ、その最適な手段。今回ご紹介した本が、少しでも皆様のお役に立てるとうれしいです。