
市場や社会環境の変化を背景に、現在、ビジネスにおけるあらゆる領域でアップデートの必要性が叫ばれています。もちろんそれは、IT担当者および技術者も例外ではありません。いわく、「間接部門から経営・ビジネスに貢献する部門へ」「プロフェッショナルであるだけでなくイノベーティブな人材へ」。
これは言い換えるならば、もはや専門知識の習得だけでは不十分ということでもあるでしょう。社会に目を向ければ、ジェンダーやコミュニケーションなどの領域でも大きな価値観の変化がみられます。今後、経営やビジネスにも関わっていこうとすれば、こうした事柄に関する思考や感性のアップデートが必要なのは言うまでもありません。 そこで今回は、いつもと趣向を変えて、社会・ビジネスの現在と未来を考える書籍を紹介します。第1回目は「未来について考える本」。イノベーティブなアイデアを生み出すヒントにも満ちた3冊です。
未来について考える本① 『さよなら未来』(若林恵/岩波書店)
「ウィンウィン」、あるいは「市場ニーズに応えること=善」とみなす考え方を〈ダサい〉〈思考放棄〉と切って捨て、〈イノヴェイションは勇気から生まれる〉と語る「ニーズに死を」と題された文章は、これから新しい事業や取り組みを始めたいと考えている方、必読です。
未来について考える本② 『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』 (小川さやか/春秋社)
何より彼らの、見知らぬ者も排除せず、相手に義務も責任も問わない他者との関係性は、評価経済やシェアリング・エコノミーの拡大が予想されている日本社会やビジネスの在り方を考える上で参考になるでしょう。
未来について考える本③ 『地球にちりばめられて』(多和田葉子/講談社)
未来のことを考えるとき、私たちはどうしても現在の延長線上で考えてしまいます。けれども誰が一年前、2020年に世界中であるウイルスが感染拡大し、人々が外出を自粛したり自宅で仕事をしたりする未来を予想していたでしょう。もしかすると、イノベーティブなアイデアを生み出すために必要なのは、本作のように「母国が消滅したら」「自分が移民になったら」というくらい大胆な仮説設定なのかもしれません。
以上、どれか一冊でも興味を持っていただければ幸いです。次回は「多様性について考える本」を紹介します。