世界中で猛威をふるい、拡大している新型コロナウイルス。政府は感染防止のため企業に対して大規模イベントの中止や休業による対策を要請するとともに、緊急事態宣言の発令、そして延長にも踏み切りました。

「3密」を防ぐべき、オフィスへの通勤を控え、リモートワークに踏み切る企業が増えています。しかし、リモートワークを行う環境整備が十分でない中小企業が多く、完全在宅勤務を実施できている企業は1割程度というデータもあります

今回の記事では、リモートワークを導入するにあたって具体的にどのような課題があるのか、その中でも企業のIT部門がクリアすべき課題について解説します。

Adc125612b54f2f7e1161bed9f77bd79cf4a5570

リモートワーク導入における日本の現状

これまで働き方改革の一環として注目されていたリモートワークの推進。まだまだ日本にはリモートワークに対応できていない企業も多いのが現状です。

現状においては、国や自治体を挙げて新型コロナウイルス対策の一環としてテレワークの導入が推進されているものの、株式会社東京商工リサーチの調査によるとリモートワークの実施率はわずか25.4%にとどまっているという結果もあります。

もちろん、さまざまな業種がある中ですべてがリモートワークに対応できるものではありません。飲食業界や建設業界などはその代表的な業種といえますが、どのような業種においてもバックオフィスで働く職種は存在し、毎日オフィスに通って事務作業を行っている人も少なくありません。深刻な感染拡大を抑えるためには、オフィスへの出社も含めて人間同士の接触を8割削減しなければならないとされていますが、企業にしてみれば、経済活動を維持しながら大規模なリモートワークに移行するには多くの課題があるのです。

たとえば、リモートワークに慣れず仕事に集中できない、ITスキルの不足、自宅における執務環境が整っていないといった人的な問題と、リモートワークに対応した人事規則や評価基準、ITシステムが構築されていないといったハード面での課題に分けられます。

リモートワークの導入にあたってIT部門が解決すべき課題

IT部門が真っ先に解決しなければならない課題としては、リモートワークを実現するためのシステム構築を含めたハード面が挙げられます。導入に際してIT部門を悩ませているのがセキュリティに関連する課題です。

業務の中にはリモートワークを一切想定しておらず、オフィスの外に出てしまうと仕事ができないケースもあります。単にノートパソコンを持ち出して作業をすれば良いというわけではなく、アクセス管理や使用するデバイスの問題、コンピュータウイルスへの対策など、クリアしなければならない課題が多くあります。このような体制が不十分なまま見切り発車のようにテレワークを強引に進めてしまうと、個人が所有するパソコンで仕事をせざるを得なくなる従業員も現れ、重要な機密データが外部に流出してしまうリスクが生じます。

また、そもそもIT部門はリモートワークに対応したツールを用意すれば終わりというものでもなく、従業員がリモートワークという新しい働き方に対応できるフォロー体制の構築も必要となるでしょう。VPNへの接続手順や勤怠管理システムの使用方法、チャットツールやファイル共有システムなどを利用する上でのヘルプデスク的な役割もIT部門が担うケースがほとんどです。

このように、IT部門はシステム選定や構築といったハード面での役割をイメージすることが多いですが、実際にリモートワークに移行すると人的なサポートなどのソフト面でのフォローも必要で、いかにスムーズに移行させられるかが大きな課題となるのです。

次回の記事では、具体的な課題の解決方法とリモートワーク導入のメリットについて解説します。

全2回 リモートワークが当たり前となる時代にIT部門が準備すべきこと

《第2回》リモートワークの課題を解決するためにIT部門が取り組むべきこと

《第1回》リモートワークの実施にあたってIT部門が抱える課題