働き方改革の実現に向けて新たにITツールを導入する場合やITツールのリプレイスを検討するシーンにおいて、さまざまな問題が立ちはだかりスムーズに導入が進まないケースがあります。IT部門と業務部門の間に生じがちなITスキルの差はもちろんですが、それ以外にもさまざまな問題点が考えられます。

今回の記事では、ITツールの導入にあたってIT部門が最低限押さえておくべきポイントと、そのために有効なITILの基本的な役割を解説します。

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ITツールの導入・運用においてありがちな問題点

業務効率化などを目的としてITツールの導入を行うとき、IT部門の担当者は導入するシステムや製品そのものの特徴や機能だけにフォーカスしがちです。

しかし、ITツールを導入した後で実際に運用していくのはあくまでも業務部門。IT部門の担当者が業務への活用方法を理解していても、業務部門の担当者によってはITスキルが必ずしも高いとは限らず、運用に活用しきれないケースも考えられます。

業務部門が求めているゴールはあくまでも業務の効率化である以上、どれだけ良いITツールを導入したとしても実務部門が活用できないのでは意味がありません。IT部門担当者の中には、ITツールを選定して導入すること自体がゴールと誤認している担当者も少なからずいるのが現状です。そのため、業務部門の十分な理解が得られないままITツールを導入してしまうと、ツールの使用方法がわからず、都度問い合わせが発生し、IT部門がヘルプデスクのような役割に終始してしまう懸念もあります。

IT部門がシステムや製品を選定する際には、ITに精通していない担当者や部署でも利用できるようなプロセス設計が重要であり、そのためには業務部門の担当者との綿密なコミュニケーションをとらなければなりません。

実務部門が抱える課題をITの力によって解決していくためには、システムを利用する「人材」と利用目的を定める「プロセス設計」、そして「プロダクト」の3つの要素をそれぞれバランス良く検討していく必要があります。これらのうち、どれか1つでも欠けてしまうとITシステムの導入が失敗に終わる可能性が高いのですが、このような課題を解決する考え方として、ITサービスマネジメントのベストプラクティスをまとめた「ITIL」という書籍群が存在します。

ITILが果たす役割

書籍群という言葉を聞くと本や論文などをイメージする人も多いかもしれませんが、実際にはそのようなものではなく、成功事例を集めたガイドラインのようなものです。

あくまでも成功事例であり、必ずしもITILに沿って計画を立て行動しなければならないというものではありません。すでにITツールが問題なく運用できているのであれば、無理にITILを参考にする必要性はないでしょう。しかし、ITツールの選定がはじめてで何もわからない場合や、導入や運用の基準が曖昧で現場に混乱を生じさせてしまっている場合などには有効な対策となるでしょう。

ITILの基本は、「サービスストラテジ」、「サービスデザイン」、「サービストランジション」、「サービスオペレーション」、「継続的サービス改善」の5つのライフサイクルによって構成されます。ITシステムの導入にあたっては自社が抱えている問題と、これらのライフサイクルを照らし合わせながら解決の糸口を探っていくことが求められます。

連載2回目となる次回の記事では、ITILの理解を深めるために基本プロセスの詳細と活用事例などもあわせて解説します。

全2回 ITサービスマネジメントにあたってIT部門が果たすべき役割とは?〜ITILの有効性〜

《第2回》ITILの基本プロセスと活用のコツ

《第1回》ITツールの導入にあたってIT部門が押さえておくべきこと