前回の記事では、システム開発において実務部門と開発部門との間のコミュニケーションを効率化するために、プロトタイプの活用が有効であることを紹介しました。そして連載第2回目となる今回の記事では、プロトタイピングによる開発ではどのようなツールが用いられるのかを紹介します。あわせてプロトタイプの導入で得られる効果についても深堀りしましょう。

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全2回 ITシステムのサービス開発において問題解決に役立つ「プロトタイピング」とは

《第1回》 システム開発において開発部門と実務部門で起こる問題

プロトタイピングに有効なツール

Webシステムやスマホアプリの開発においてプロトタイプを製作する際には、「どのメニューをタップしたらどの画面に遷移するのか」といったシミュレーションが重要です。また、UIやUXデザインも1つの画面内に収まり、使いやすい設計にするのが理想的でしょう。

このようなプロトタイプを製作するには、通常のシステム開発に近い技術や手間がかかると思われがちです。しかしプログラミングのスキルがない人でも、プロトタイプを手軽に作成できるツールやサービスが存在します。

画像を取り込んでアニメーションを作成してプロトタイプを製作するものや、ライブラリ(見本テンプレート) に保存されたUIから選択して組み合わせるものなど、さまざまなツールがあります。無料ツールもありますが、有料プランでも月額数千円程度で利用が可能。

実際にWebやアプリ上でアニメーションを指定すると、リアルなシステムに近い動きを実現できます。開発部門の担当者は言葉で説明するよりも正確にイメージが伝えられ、実務部門の担当者も具体的に改善要求を出しやすくなります。

プロトタイピングの導入によって得られる効果とメリット

プロトタイプを活用したシステム開発では、実務部門と開発部門との間で共通認識を取りやすく、開発段階で手戻りが生まれにくいメリットがあります。結果としてスムーズにシステム開発が進行し、最小限の工数で開発プロジェクトが完結できるでしょう。

また、打ち合わせを重ねるごとに仕様が加わって肥大化することも回避できます。なぜなら実際にプロトタイプの中に実装した段階で、使いづらさを体感することが多いため。プロトタイピングの導入は、無駄な仕様や機能を事前に把握し、余計な作業を削減することにもつながるのです。

さらに、プロトタイプはマーケティングにも有効活用できます。開発するシステムによっては、エンドユーザー向けにリリースを検討しているサービスやシステムもあるでしょう。この場合、複数パターンのプロトタイプを製作すれば、どちらがエンドユーザーに受け入れられやすいかをいち早く調査・検討が可能。そのうえで本番開発に着手できるため、効率的なシステム開発と、システム開発費用の圧縮が期待できます。

このようにプロトタイプはシステム開発の効率化だけでなく、さまざまな用途に活用できます。スムーズにシステムを開発するためには、できるだけ早い段階でプロトタイプを製作し、実務部門と開発部門が同じ目線で対話することが重要でしょう。

開発部門と実務部門との間のコミュニケーションがうまくいかずに開発が難航している場合はもちろん、システム開発を依頼するのがはじめてで不安を抱えている実務部門の担当者も、ぜひプロトタイプを活用したシステム開発を提案してみてください。システム開発に関する専門的な知識やスキルがなくても、開発部門とスムーズにコミュニケーションをはかることができるでしょう。

全2回 ITシステムのサービス開発において問題解決に役立つ「プロトタイピング」とは

《第2回》システム開発の問題を解決するプロトタイピング

《第1回》 システム開発において開発部門と実務部門で起こる問題