近年、フィンテック(FinTech)は金融業界だけにおさまらないテクノロジーへと変化し、さまざまな業種での活用が検討されています。そのような中で、企業のIT部門も“あるべき姿”に変革していかなければなりません。連載2回目となる今回の記事では、フィンテックの活用事例や今後のIT部門の役割やあるべき姿について詳しく紹介します。

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全2回 本格的なフィンテック時代が到来したときにIT部門に求められるもの

《第1回》フィンテック時代の到来とIT部門に突きつけられた課題

金融業界を飛び越えて異業種との連携を実現するフィンテック

ビットコインに代表される仮想通貨に用いられているブロックチェーン技術やQRコード決済などの技術は、フィンテックの代表的なテクノロジーのひとつです。それらのテクノロジーは、金融以外の業界でも広く活用する動きが顕著になっています。金融業界に大きな変革をもたらし、新たな市場でのイノベーションを誕生させると期待されているフィンテック。

ブロックチェーンやAI、IoTなどのフィンテックに関わるテクノロジーを活用し、どのようなITサービスが求められるのかを検討する必要があります。

例えば、住信SBIネット銀行やソニー銀行では住宅ローンの審査時にAIを活用し、ビッグデータから得られる膨大な情報をもとに、一次的なローン審査業務をAIで代替しています。イレギュラーはあるものの、ほぼ人間と同等の審査結果が得られるほどの高い精度を実現。最終的な審査可否は人間が行っていますが、一部でも自動化に成功したことによって業務負荷は大幅に軽減されました。

このような金融業界で成功しているシステムをパッケージ化して特定の企業に提供することで、不動産の賃貸契約や通信契約の申し込みなどにおいてスピーディーなビジネスが展開できるようになります。

また、自動車部品メーカー大手のデンソーでは、自動車の走行データやメンテナンスデータをブロックチェーン上に記録する技術を開発。自動運転技術が実現したとき、ソフトウェアが改ざんされハッキングされることを防ぐためにも有効とされています。これは、自動車を下取りに出す際などにも走行距離やメンテナンスデータの証明として活用できます。

ブロックチェーンの活用事例はまだまだ少ないですが、デンソーの事例以外にも登記簿の管理やWebコンテンツサービスの提供、さらには戸籍情報などの管理においても活用が期待されています。

新たなサービスやオペレーションを実現するため、企業内のシステム構築を再検討し、既存ツールと連動しながらスモールスタートによるデジタル化を目指していくのが現実的な道といえるでしょう。また、同時にユーザーにとってわかりやすく使いやすいインターフェースを検討することも重要です。

これまでのIT部門と将来あるべき姿

これまでのIT部門はシステム開発を外部のベンダーに依頼するため、社内のニーズや要件を取りまとめる役割を担ってきました。しかし、今後のIT部門は自らを変革していかなくてはなりません。経営層や実務部門からの依頼や相談を受けるだけの受け身の姿勢ではなく、多様な部門と積極的に関わり合いながら自社システムの刷新を提案する必要があります。

特に社内の実務部門はテクノロジーに詳しい人ばかりではなく、そもそもITでどのような仕事が効率化できるのかわかっていないケースも少なくありません。実務部門の担当者と積極的にコミュニケーションをとりながら、どのような業務にどれだけの時間が取られているのかをヒアリングしたうえで、テクノロジーによって効率化できる部分を切り分けていくことから始めてみましょう。

フィンテックをはじめとしたテクノロジーが広く活用されるようになると、導入コストも比例して下がっていくものです。積極的にITツールを駆使することによって、コストだけの理由でITツールの導入が難しかった企業や業界でもその技術を広く求められるようになります。その結果、さらにニッチな分野できめ細かい課題解決が求められるようになるでしょう。

例えば、スマートフォンが登場した当初はゲームなどのエンタメ的なアプリケーションが中心でしたが、普及率が高くなるにつれて多様化。今ではあらゆる業界のビジネスに対応した実用的なアプリケーションが登場し、ニッチな分野にも進出しています。これと同じような動きがフィンテックの世界でも起こると予想されています。

全2回 本格的なフィンテック時代が到来したときにIT部門に求められるもの

《第2回》これからのフィンテックは業種を超えたイノベーションを生み出す

《第1回》フィンテック時代の到来とIT部門に突きつけられた課題