金融業界のみならず、あらゆる業界で注目されているフィンテック(FinTech)。今後テクノロジーの発展によって本格的なフィンテック時代が到来したとき、産業はどう変化していくのでしょうか。連載1回目となる今回の記事では、現在企業が抱えている現状と問題点を詳しく解説します。

62b25fe05d7ee682476933c7fdb9262416b0733c

大規模な人員削減とフィンテックの隆盛

ここ数年の間にメガバンクをはじめ多くの民間企業で大規模な人員削減が進んでいます。背景には中高年世代の人件費が高騰していることや、AI・RPAによる業務自動化が進んでいることが挙げられるでしょう。このようなテクノロジーの進化は金融業界で「フィンテック」という言葉も生まれるほど大変革の波を起こしていますが、フィンテックは金融業界のみならず、あらゆる産業において変革を起こしています。

例えば、デジタル通貨での取引決済を行う事業を運営するディーカレットや、フィンテックの技術を活用した給与即日払いサービスを提供するペイミーなどは相次いで巨額の資金調達を実現。加えてクレジットカード大手のJCBがQRコード決済の新たなスキームを開発するなど、スタートアップ企業だけではなく大手もフィンテックへの潮流に対応し始めています。

世の中全体の直近動向を見ると、2016年頃にブームとなった仮想通貨をはじめとして、2018年後半から2019年にかけてはQRコード決済が台頭。「PayPay」や「LINE Pay」、フリマアプリで圧倒的シェアを誇るメルカリが運営している「メルペイ」など、資本力を活かしてQRコード決済サービスに参入する事業者が続々と増えています。

現在、多くの企業が新規サービスの開発で注目しているAIやIoTビッグデータなどのテクノロジーを活用することによって、フィンテックはこれからますます加速していくと考えられています。

フィンテック時代において成長の妨げになっているもの

フィンテックやAI、IoTをはじめとしたIT関連のテクノロジーは日進月歩で進化しているものの、金融業界にはレガシーなシステムが依然として多く残っており、産業全体における成長の妨げになっている現状があります。このような傾向は金融業界に限ったことではなく、一般企業にも広く見られます。

例えば、事業を支える基幹システムが古く、老朽化によって多額のメンテナンス費がかかっているケースはその象徴的な事例として挙げられます。また、業務が完全にシステム化に対応できず、一部に手作業や個別の判断が求められるようなシステムも少なくありません。業務の性質上、完全自動化の実現がどうしても難しかったとしても、システムを刷新したり、業務手順やルールを見直したりすることによって自動化の比率を高めることは可能なはずです。

レガシー化したシステムを刷新し、通常業務も含めてデジタル化を進めていくことが多くの会社のIT部門に突きつけられた最大の課題といえるでしょう。金融業界に限らず、レガシーなシステムが残り続けている企業は最新テクノロジーに対応できず、ユーザーの利便性が低下し、結果として顧客が離れていくリスクがあります。そのため、早急な対応が必要です。

このような先進的な取り組みを実行するためには、経営層の理解が必要不可欠です。しかし、レガシーなシステムを排除したうえで大がかりなシステム刷新を実行しようとすると、設備投資だけに目が行きがちで、導入した後にどの程度の効果が見込めるかといった前向きな議論がされにくい傾向があります。そのため、レガシーなシステムから時代の流れに応じたシステムへ転換していくためには、まずは経営層にフィンテックによって得られる効果を正しく理解させる必要があります。

全2回 本格的なフィンテック時代が到来したときにIT部門に求められるもの

《第2回》これからのフィンテックは業種を超えたイノベーションを生み出す

《第1回》フィンテック時代の到来とIT部門に突きつけられた課題