働き方改革の実現に向けて、業務効率化のためにRPAを導入する企業が増えています。しかし、いざRPAを導入して運用してもなかなか業務量が減らず悩んでいる企業も少なくありません。RPAによって業務効率化に成功する企業と失敗する企業では具体的に何が違うのでしょうか。

今回の記事では、RPAの導入・運用を成功させるための秘訣を中心に解説していきます。

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RPA運用を成功させるためには

日本では2016年頃から、さまざまな企業でRPAが導入されるようになりました。労働力不足という社会的課題が浮かび上がってきたと同時に、AIなどの技術的な進歩もRPAの普及を推し進めている要因として考えられます。

しかし、RPAというツールを導入しただけではすべての企業が必ずしも業務効率化が達成できるとは限りません。十分な知識を持たないまま導入すると運用が失敗に終わってしまうこともあり、実際に思うように効果が上がらず悩んでいる企業の担当者も少なくありません。

なかでも典型的なのが、実務部門が主導でRPAを導入したものの、その部署内での一部業務にのみ利用され、RPAの活用の幅が広がらずに終わってしまうパターンです。RPAは実務部門単位で導入できることは確かなのですが、大幅な業務効率化を目指すためには全社で横断的にRPAを活用できるような仕組み作りが求められます。

しかし、当然のことながら大規模なシステム基盤を構築するとなると実務部門だけでは実現できません。そのため、RPAの導入と運用によって真の業務効率化を成功させるためには、IT部門の協力も不可欠といえるのです。

RPA運用が失敗に終わる要因

RPAを導入したものの、本格的な活用に結びつかず運用が失敗に終わってしまうパターンについて、いくつかのポイントに分けて詳しく紹介します。

・ロボット開発者向けトレーニング
RPAはプログラミングを用いた従来のシステム開発に比べると確かに簡単ではあるものの、何も知らない初心者が導入することはやはり難しいものです。RPAの導入段階においては、システム開発に慣れているIT部門がRPAの開発者向けトレーニングから主導していかないと全社的な導入に結びつきません。

RPAを使ってどのようなロボットが作れるのか、どのような作業に向いているのか、そして実際のロボットの作り方など、実践的な内容を各現場の担当者に落とし込むうえでIT部門の力が必要です。

・利用する部署や業務
現場レベルでの導入が可能なRPAは、実務を担当する部署が個別に導入し、小規模な業務活用から開始するケースが多いものです。そのため、IT部門やほかの部署を巻き込むことができず、小規模で限定的な業務の自動化に終始してしまいがちです。

RPAは本来、複数のシステムを横断的に網羅することによって大きな業務効率化が実現可能になります。RPAを利用する部署や業務が限定的になると、結果としてRPAのパフォーマンスを十分発揮することができません。

・業務整理
RPAの運用における失敗でもっとも多いのが、業務整理ができていないまま導入するパターンです。

たしかにRPAは業務の自動化を実現するために有効なツールですが、そもそもRPAに任せるべき業務とそれ以外の業務が明確に分類できていないと、高い効果を発揮することはできません。

RPAの特性や機能を十分理解していないと適合業務の選定は困難です。システム開発の要件定義に近い考え方も要求されます。当然のことながら規模が大きくなればなるほど実務部門だけでRPA導入の要件定義を行うことは難しいため、IT部門の協力が不可欠といえます。

・障害対応
何らかの理由によってロボットが停止し、業務が遂行できなくなる障害が発生することも考えられます。重要な業務であれば、万が一RPAが利用できなくなった場合の対策も考えておかなければなりません。

このように、RPAの導入が失敗に終わるのはさまざまな原因が考えられ、IT部門の協力がなければ解決できない問題も多いです。実務部門だけでは対応できる範囲も限られていることを念頭に置き、IT部門も含めて全社で検討していかなければなりません。

全2回 RPAの導入と運用を成功させるために必要なこととは?成功事例から考える秘訣

《第2回》RPA運用を成功させるためにIT部門ができることとは?

《第1回》RPAの運用はなぜ失敗する?IT部門が捉えるべき要因とは