AI(人工知能)が脚光を浴びており、さまざまなITソリューションの中に取り入れられています。それが実現するレベルはさまざまであり、その実用度も一概には判断できません。その力を過信して安易にAIに飛びつく前に、まずはこの技術に対してどのように捉え、どのような姿勢を持つべきなのかを知っておく必要があります。

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AIは「幻滅期」に入っている

日本国内でも熱狂的と言えるような盛り上がりを見せたAI(人工知能)。しかし、ここにきて一連のブームは徐々に終息していきそうな傾向も見せています。ガートナージャパンは2018年の10月25日、さまざまなテクノロジーの成熟度や社会への適用度を表す「ハイプサイクル」において、AIが流行期から幻滅期へと差し掛かっているとする見解を発表しました。

実際、「バスに乗り遅れるな」とばかりに、どんな話題にも飛びついていた企業のAIの捉え方も次第に冷静さを取り戻してきました。もっとも、幻滅期に入るとはいえAIのテクノロジーそのものが否定されているわけではありません。

そもそもハイプサイクルとは、主にIT分野の新テクノロジーの認知度や期待度が時間の経過と共にどのように変化していくのかを、「黎明期」「過剰な期待のピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産性の安定期」の5段階に分けて示したもので、人々の関心を集めたテクノロジーは必ずこのサイクルで推移します。AIはようやく「過剰な期待のピーク期」を超えたわけで、実は幻滅期に入ることは「これからが本番」を迎えることを意味します。

汎用的なAIは2030年頃からと予想される

ビジネスに役立つ“現実解”の観点からAI活用を検討する上で、まず重要なのは現在のAIの技術レベルと限界をしっかり理解しておくことです。

少し前には、AIと並んで「シンギュラリティ(技術的特異点)」というキーワードも注目されました。全人類の叡智を超えるような超AI(ASI: Artificial Super Intelligence)が出現するというものです。また、その前段階として汎用AI(AGI: Artificial General Intelligence)が実用化すると予想されています。

こうしたASIやAGIの実現に向けて、さまざまな基礎研究や技術開発が進められているのは事実です。しかし、これらのテクノロジーを今すぐ入手できるわけではありません。ASIが実現するのは2045年、AGIが実現するのも早くて2030年と予想されています。

“育て方”を知ることがAI活用の第一歩

これに対して今すぐ活用できるAIは、特定の目的にしか対応できない「弱いAI」(SPMI:Special Purpose Machine Intelligence)なのです。たとえば囲碁の世界チャンピオンに打ち勝つようなAIも、そのまま将棋の対戦ができるわけではありません。

言い方を変えれば、今AIと呼ばれているもののほとんどは、まだ何も知らない「赤ちゃん」です。上手く育てることができれば賢くなりますが、育て方を間違えると実用に耐えるものにはなりません。役立つ「大人」にするためには、テクノロジーだけではなく、育て方(学習)や与える食事(データ)も非常に重要であることを認識しておく必要があります。

これは特に注意すべきポイントです。AIは、企業が持つデータから、人間では容易には発見できないような知見や傾向を示唆してくれるものであると多くの企業は期待します。しかし、そのためには十分なデータの量はもちろんのこと、学習させるためのプログラムの細かなチューニングが必要であり、それらはかなりの時間や手間が必要になります。一度導入すれば望むような結果を提示してくれる存在へと勝手に学習してくれるわけではない点には十分に注意が必要です。

全2回 「現実解」としてのAI活用の今

《第2回》 様々なサブスクリプションサービスが、AI導入のハードルを下げる

《第1回》「幻滅期」に入ったAI、いま知っておくべきこととは