オフィス業務の効率化・自動化を目的として、ソフトウェアロボットに作業を任せるRPA(Robotic Process Automation)が本格的に普及し始めてから約3年が経過しました。この間、RPAの認知度は確実に広まり、さまざまな業務への活用が始まっています。市場規模も急速に拡大し続けており、今後数年間の高成長が見込まれています。そんなRPAを自社に導入するには、どのような点に留意するべきでしょうか。RPA導入の進め方について考えてみます。

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急速な拡大が続く日本のRPA市場

RPAという言葉が最新のITトレンドとしてメディアに取り上げられるようになったのは、2015年半ば頃からです。ITの新規導入に消極的な日本市場でも、オフィス業務の効率化・自動化を目的に登場したRPAは早くから認知され、現在は世界市場をリードするまでになっています。

市場規模も倍々ゲームで伸長し続けています。調査会社ミック経済研究所が2018年6月に発表した「RPAソリューションの市場動向 2018年版」によると導入コンサルティングからシステムライセンス、システム構築、保守サービスまでを含めた2018年度のRPA市場全体の規模は約444億円に達すると予測しており、前年比で2倍以上の拡大が見込まれるといいます。

RPAが日本市場に根付いたのには、いくつかの理由があると考えられます。
1つは業務システムの運用現場において、もともとバッチ処理などによってシステムの自動実行が行われていたという点。業務システムの自動化はプログラミングベースなので敷居が高いものの、その迅速性や正確性は実証済みです。ITスキルが十分でないビジネス部門のスタッフも、直感的な操作で業務を自動化できるなら活用したいと考えているのでしょう。

また日本では、製造業の生産現場を中心に古くから産業用ロボットを導入して業務効率化・品質向上に取り組んでおり、業務自動化に対する抵抗感がないことも理由かもしれません。

さらにここ最近は働き方改革が国を挙げて進められ、特にオフィスワークの業務効率化に取り組む機運が高まっていることも、RPAの導入が進んだ要因でしょう。それに加え、RPA市場拡大に伴って新規参入する国内ベンダーが増加。ビジネス部門のスタッフでも扱える平易な操作性のRPAツールが登場したことも、普及の大きな後押しとなっています。

業種業務を問わずに活用が始まる

RPAツールは、定型的な事務処理業務が多い銀行・金融機関で先行導入されてきました。そこで高い導入効果が得られたため、いまや業種業務を問わず、さまざまな領域で使われています。

具体的な処理の事例をいくつか紹介しましょう。ある中小企業の経理担当者は、各ビジネス部門から送られてくる出張旅費・交通費の妥当性を確認するために、経路案内ソフトを使って手動で作業を行っていました。入力はコピー、またはリストから選択するという単純なものですが、月末の締め日近くになると出張旅費・交通費精算書が集中し、非常に手間がかかります。ここにRPAを導入し、届いた精算書のフォームから乗車駅・下車駅の情報を取得して運賃を調べるという作業を自動化しました。非常にシンプルかつ簡単な仕組みですが、その業務効率化の効果は絶大で、毎月20時間以上を他の業務に振り分けられるようになったといいます。

また、ある法人向け販社では、販売管理システムで管理する前月データを基に毎月見積書を発行し、それをメールで顧客の担当者へ送付するという作業を行っていました。画面上に表示されたデータから見積金額を計算し、そこから見積書を作成してPDF形式で保存。それをメールに添付して送信するという作業ですが、人手で行っていたためにデータを見誤ったり入力ミスをしたりといった人的ミスがしばしば発生していました。そこにRPAを適用して自動化したことで、決して間違えることなく正確な処理を非常に高速に行えるようになったのです。これにより、この作業を委託していた費用が不要になり、大幅なコストダウンにつながったといいます。

このように特に煩雑ではない業務であっても、人手で大量の処理を行う業務にはRPAが極めて有効であることがわかります。次回は、具体的にどのようにRPAサービスを導入するべきか、参考例などを交えてご紹介していきます。

全2回 業務効率化・自動化ツールとして普及期に突入したRPAの現在地

《連載:第2回》 RPA導入に欠かせない、人材育成とサービス選びのコツ

《連載:第1回》 バズワードで終わらなかったRPA −−− その現状を確認する。