国主導による取り組みが進められている「働き方改革」。多様な働き方の実現と労働生産性の向上を両立させるには、組織の文化の醸成や、制度面での整備が重要ですが、やはり「ITのチカラ」が欠かせません。そのプロフェッショナルであるIT部門には、テクノロジーを活用してどのような働き方改革を実現できるかを提案していくべきです。ではどのようにそれを行っていけばよいのでしょうか。

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テレワークの導入は費用対効果を考える

働き方改革の目的は、柔軟で多様な働き方を認めたり、業務を効率化して労働生産性を高めたりすることで、深刻な人手不足の解消と長時間労働の是正を実現することにあります。このような働き方改革の取り組みを成功させるには、必然的にITツールの導入が必要になってきます。

柔軟で多様な働き方を実現する手段の1つに「テレワーク」があります。テレワークというと、オフィスのコンピュータにリモート接続できる環境を整備して在宅勤務を実現し、育児や介護によって離職せざるを得なかった人材を継続雇用して人材不足に対応するというイメージを持つ人が多いでしょう。しかし、それだけではありません。外出先のモバイル端末から業務を行う「モバイルワーク」も立派なテレワークです。社外で仕事ができるようにするテレワークは、IT部門が最も提案しやすい働き方改革の施策と言えます。

テレワーク=在宅勤務のイメージにとらわれて、いきなり難しいことを導入する必要はありません。まずは業務の一部からでも、ITを使って社外での作業に置き換えられるものは必ずあるはずです。それはテクノロジーを理解しているIT部門が一番わかっているはずです。

IT部門がテレワークを提案するとき、注意したいのは「技術に偏らない」ということです。運用管理を担当することになる情報システム部門は、管理がしやすくセキュリティ対策も講じやすいといった技術的な側面からテレワークシステムを選定しがちです。しかし、IT部門の考えを優先してしまうと、どうしても高額な初期投資が必要となるシステムに行き着き、費用対効果が得られないということになりかねません。重要なのは、投資に見合った効果が期待できるかどうかという点です。その効果とは、もちろんIT部門自身への効果も大事ですが、事業部門に向けたものという意識を持つことが重要であるのは言うまでもありません。

テレワーク導入に必要な就業規則の改訂

テレワークを導入するにあたり、最も効果を測りやすいのはモバイルワークです。モバイル端末を使って各種報告業務、承認・決裁が必要なワークフロー、遠隔会議などが実現できるようになれば、これまでオフィスにわざわざ戻る移動時間、オフィスで作業する残業時間を削減できます。削減できる労働時間から人件費、交通費などの経費を計算すると、どれだけの効果が得られるか試算できます。

具体的にどんなシステムを選定・提案するかは、試算した効果から逆算して決定すべきです。例えば、オフィスのデスクトップPCを廃止してクライアントをモバイル端末に集約する場合、個人のデスクもなくしてフリーアドレス化することで、オフィススペースも縮小するといった提案もできるでしょう。

また、テレワークを実際に運用するには、就業規則を改訂するなどのルール作りが必要になります。外出先や自宅から作業する場合の申請方法、労働時間の換算方法、人事評価制度なども事細かに決めなければなりません。この作業は本来、人事・総務部門が担当するものですが、IT部門の立場からアドバイスすると非常に効果的です。ちなみにテレワークを導入する場合の就業規則については、日本テレワーク協会がひな形を用意しているので、それを参考にするとよいでしょう。単にITを提案するだけでなく、それを導入することで生じるその先まで関われる力が、組織が変わっていくための1つの要素であるといえるでしょう。

全2回 「働き方改革」に情シスはどう貢献できる?社内へ提案するIT施策のヒント

《第2回》 IT部門が提案するべき、労務管理における「ITのチカラ」

《第1回》IT部門が提案するべき、テレワーク導入における「ITのチカラ」